ストレスに悩まないために②

「根本原因は思考、食事、受容」


思い込み、不摂生、現実逃避はストレスに飲み込まれる

まずはダメージが大きいものから取り組む

前回(まだ見ていない方はこちらへ→ストレスに悩まないために①)ではストレスに気づくところまでご紹介しました。今回はロングストレスの解決法についてご紹介していきます。
前回ご紹介した通り、ストレスには大きく分けて「ショートストレス」「ループストレス」「ロングストレス」の3種類あります。
ロングストレスは一番ダメージが大きいのに加えて、回復にも時間がかかるため早急に対策をしなければなりません。まずはロングストレスを長期的に対応しつつ、日々のショートストレス、ループストレスに対応していくというふうに進めていくのがよいかと思います。

ストレスを引き起こす3つの根本原因

ストレスを感じるということは「思っていたことと違う」や「思ってもいなかった」など現状とのギャップがあるということです。
そのギャップを無くすこと、あるいは小さくすることによってストレスも減っていきます。なぜギャップが生まれるのか。根本原因として3つあるのでご紹介していきます。

①「思考のアンバランス」(考え方の偏り)
考え方や物の見方に偏りがある状態。明確な裏付けもなしに物事を決めてかかり、そのせいでストレスを感じる現象です。
何でも自分のせいにしたり(自責)、逆に自分以外のせいにしたり(他責)、相手の心を勝手に推測したり(憶測)、自分や他人にレッテルを貼ったり(ラベリング)、何事も良いか悪いか決めないと気が済まない(白黒思考)など本当のところではそうではないかもしれないのに根拠も無い決めつけしてしまう思考がストレスの最大の原因です。まずは自分の考え方の癖を直していきましょう。

②「栄養のバランス」(不摂生な食事)
不摂生な食事により栄養バランスが悪くなり、メンタルも弱くなってしまう現象です。
ジャンクフードばかりの不健康な人よりバランスよく健康的な人の方がストレスに強そうなイメージがあります。実際最近の研究では、健康的な食事をしている人の方が格段にストレスに強いということが分かってきています。加えて集中力や記憶力といた脳機能が向上したという研究結果も出ています。正直、不摂生な食事がメンタルを弱くするメカニズムはまだ解明されていませんが、活性酸素(油など)が脳にダメージを与え、結果メンタルが低下するのではないかと言われています。
ともあれ、健康的な身体の状態であればストレスに強くなれることはできるので少しずつ日々の食生活改善をしていきましょう。

③「受容のバランス」(現実を受け入れない)
自分でコントロールできないものを受け入れられない現象。認めることが出来ず、現実を否定し続けることで起きるストレスです。
例えば「仕事で大きなミスをした」場合、「あの時こうしてればミスなんてしなかったのに...」と「失敗したのは事実。次は同じことをしない」のパターンに分かれるかと思います。もちろん、受容のアンバランスが起きているのは前者です。
自分がミスをした事実は変わらないのだから「あの時こうしておけば...」という過去のことを悔やんでもストレスが溜まるだけで何も解決はしません。自分のコントロールで事実が覆ることが無いようなことは、受け入れ、次に繋がるようなことを考えていきましょう。

このようにストレスの根本原因は自分の考え方、健康状態、受け入れ方によって構成されています。どれも心当たりがあるのではないでしょうか?
このアンバランス状態(ストレス)を無くすことは人間が感情の生き物である以上難しいでしょう。しかし、今のままで放置していくとストレスに飲み込まれてしまいます。ストレスに悩まないために①でも紹介しましたが適量を保つことが重要です。
「思考のアンバランス」「栄養のバランス」「受容のバランス」を意識し、鍛えていくことでストレスの軽減をやっていきましょう。
最後に各アンバランスに有効な解消法をご紹介していきます。

思考のアンバランス解消法

①「エクスプレッシブ・ライティング」
1980年代に生まれた心理療法で、現在では認知行動療法で使われる方法です。とにかく書き出す!というやり方です。
頭で考えていることを書き出す(見える化する)ことは非常に有効で思考の整理、内省することができ、もっと脳を効率よく動かすことに役立ちます。これを続けていくことで数週間から数カ月で鬱や不安が改善し、ストレスが穏やかになったという研究報告もあります。
SNSや陰で愚痴を言うより、紙にすべてを吐き出していきましょう。

やり方
1,まずは4日だけやってみる
エクスプレッシブ・ライティングは最低でも4日は続けないと効果は薄れてしまいます。
2,1日20分は書き続ける
誤字脱字は気にせず、ひたすら悩みをノンストップで書きなぐって下さい。4日間同じ悩みでも構いません。
3,慣れたら悩みを展開する
例えば「仕事でミスをした」という悩みを「このミスは他の人にどんな影響を与えるか?」「自分の未来にどうつながるのか?」など悩みを展開していきましょう。こうすることで深い気付きができ、ストレスを客観的に見る視点が育っていきます。

②「自動思考キャッチトレーニング」
主に認知行動療法で使われる方法で、思考のアンバランスを解消するのに最も有効だと言われています。自動思考とは、あなたの意思とは無関係にふと頭の中に浮かび上がってくる思考やイメージのことです。
「今日も天気良いな」「あれ?この人昨日も見たな」これがポジティブな自動思考であれば問題はありませんが、ストレス(思考のアンバランス)になるものなら無意識のうちに心の奥底に蓄積していき、気づいた時には取り返しのつかない状態になっていることは珍しいことでありません。このことに気づくのが自動思考キャッチトレーニングです。このトレーニングをやっていけば瞬時にアンバランスに気づき、ストレスが溜まる前に対策が打てるようになっていきます。

方法①「セブンコラム」

数あるトレーニングの中でも、もっとも効果が高いのがセブンコラムで、多くの心理療法でも使われます。ステップ①~③は自動思考であり、ステップ④~⑥は自動思考を客観視するという流れになっています。

図のように7つの項目について記入していきます。最近はアプリもありますのでそちらを使っても良いかと思います。
①状況(出来事)ーストレスを与えた人、場所、時間など
②認知ー①を受けてどう思ったか、考えたか
③数値化ー②の感情を%や割合で表す
④根拠ー思い込みではなく「事実」に基づいて書く
⑤反証ー「事実」は変えずに、別の認知で考える
⑥バランス思考ー自動思考よりも「事実」を基に新たに考える
⑦今の気分ー心の変化を書きます

方法②「シンプル・ソート・レコード」

初心者にオススメの方法。やり方としてはセブンコラムの①~③までになりますのでそちらを参照するといいでしょう。

栄養のアンバランス解消法

方法①「SMILES(地中海式)」

メルボルン大学などがメンタルを強くするための食事法として開発。結果は劇的で、12週間この食事法を取り入れると症状が3割も改善。
「生きるのも辛い」レベルだった人がちゃんと生きていこうと思うようになりました。
基本的には、いつもより野菜とフルーツの量を増やし、魚と脂身の少ない肉をしっかり食べればOKです。以下に推奨される食品と避けるべき食品を参考にしてみてください。

推奨される食品
・全粒粉のパンやパスタ:パンなら5~8枚/日、パスタなら300~480g/日
・野菜:どんなものでもOK。こぶし6個分/日
・フルーツ:野球ボールぐらい3つ/日
・豆類:約180g/週
・ナッツ:手のひらに軽くのるぐらい/日
・魚:最低120g/週
・脂肪の少ない牛、羊、豚肉:180~240g/週
・鶏肉:120~180g/週
・卵:6個以上/週
・オリーブオイル:小さじ3杯/日
・乳製品:牛乳・ヨーグルトなら約480ml/日、チーズなら約80~120g/日

避けるべき食品
・酒:基本的には厳禁ですが、赤か白ワインなら300ml/週まではOK
・精製された炭水化物:全粒粉でないパンやパスタ、白米は避けた方が良い
・お菓子:ケーキ、スナック、アイスはNG。唯一カカオ70%以上のダークチョコレートは一欠けら/日までOK
・揚げ物:天ぷら、フライなど油で高温調理されたものは厳禁。酸化した油が体内の炎症を招く
・ファストフード:俗にいうジャンクフードは厳禁
・加工肉:ベーコン、ハム、ソーセージなど保存性を高めるために手が加えられた肉は厳禁
・清涼飲料水:砂糖や人工甘味料が入った飲み物は3本/週まで

方法②「腸内環境を整える」

まだ十分な科学的データが揃っているわけではありませんが、腸内環境を整えることはメンタル改善に役立つ可能性があることが研究で分かってきています。
腸には体内の免疫細胞が60%以上存在していると言われており、腸内環境が悪くなると、肌荒れ、風邪などの感染症にかかりやすくなります。
腸内環境を整えるとは体に良い善玉菌を増やすことです。それが「プレバイオティクス」と「プロバイオティクス」です。
プレバイオティクスは、腸内菌のエサとなる物質のことで、プロバイオティクスは善玉菌のことを指します。
食事から摂るのが理想ですが、難しい場合にはサプリで補う手段をとってもよいでしょう。ただし、多く摂取しすぎると逆に体調を崩す危険もあるので摂取量に気をつけ、ご自身の身体と相談しながら使用していきましょう。

「プレバイオティクスを増やす手段」
フラクトオリゴ糖(サプリ)
オススメは「Jarrow Formulas 『lnulin FOS』」。AmazonやiHerbなどで購入できます。あまりとり過ぎると、下痢やガスが溜まることがあるので、まずは15g/日からスタートしていきましょう。
発酵食品
納豆、味噌、キムチなど
食物繊維の多い野菜
ブロッコリー、ごぼう、キャベツ、アスパラなど

「プロバイオティクスを増やす手段」
リジン&アルギニン
2つとも必須アミノ酸で体内で生成できないので食品から接種していきましょう。肉、魚、大豆製品(豆腐や納豆)
乳酸菌などのサプリ
プロバイオティクスには多くの種類があり、それぞれ効果も違います。自分に合いそうなものを選びましょう。

受容のアンバランス解消法

方法①「アクセプタンス・ワードセラピー」

いきなり全てを受け入れろと言われてもどうしていいか分からないのが普通です。まずは受容の精神を表現した名言を読んでみよう、というのがアクセプタンス・ワードセラピーになります。「読むだけでいいのか?」と思われるかもしれませんが、実際の研究では「ストレスによる食べ過ぎが60%減」「ストレスによるムダな買い物に手を出す確率が50%減」という結果が出ています。
いくつか紹介しますので、繰り返し読んでみて受容の精神をつかんでみてください。

アクセプタンス・ワードの例
①「しがみつくことが私たちを強くすると考える者もいるが、時には手放すことが私たちを強くするのだ」ヘルマン・ヘッセ
②「なれなかった自分になるのに、遅すぎることはない」ジョージ・エリオット
③「いい会話とは『意見が違う』という出発点から始まり、『協力しよう』でしめくくるもの」中山庸子
④「誰かへの怒りにこだわるということは、その嫌いな相手が、あなたの頭に住み着く権利を無料で与えているのと同じだ」アン・ランダース
⑤「私たちが本当に練習すべきことは一つだけ。お互いの存在を手放すことだ。しがみつくことは誰でもできる。そんなことは学ばなくてよい」リルケ
⑥「一呼吸ごとに受容と開放のチャンスが訪れる。愛情を受け入れ、痛みを開放する」ブレンダ・マッキンタイヤ
⑦「ときどき、自分がしがみついているものに本当の価値があるのか確かめ、手放さねばならない」作者不明
⑧「私たちは計画した人生をあきらめる意思を持たなければならない。未来に待ち受ける人生を受け入れるために」ジョセフ・キャンベル
⑨「自分が何者であるかにこだわらなければ、自分になれるだろう」老子
⑩「固く握りしめた拳とは手をつなげない」ガンジー

方法②「脱フュージョン」(思考を観察する)

近年の心理療法で広く使われるようになった方法です。できるだけネガティブな思考と自分を切り離して、客観的に見つめ直すようにするものが脱フュージョンになります。いくつか方法がありますのでご紹介していきます。

「…と思った」を付け加える
ネガティブなフレーズが浮かんだら、自分の中にどんな感覚が生まれているかチェックしながら、フレーズに「…と思った」と付け加えて5~6回ほどリピート。何度か繰り返すことで、ネガティブな思考と距離がとれるようになり、嫌な感情に巻き込まれにくくなります。
例「自分はダメだ」→「自分はダメだ…と思った」(リピート)

アホらしく「歌っちゃう」
ネガティブな思考を歌に変えて、できるだけ声に出してアホらしく歌う。一気にネガティブな思考がアホらしく感じられ、どんなネガティブな思考でも単なる言葉に過ぎないということを実感していきましょう。
例「自分~は~ダ~メだ~♪」

「おつかれさん」を付け加える
ネガティブな思考に対して親友を労うかのように「おつかれさん!」と最後に付け加え、またぶり返して来たら「また来たな!おつかれさん!」と声をかけてやる。この方法はネガティブな考えが文章や言葉として頭に浮かんでくるタイプの方に向いたやり方です。
例「自分はダメだ…という思考、おつかれさん!」→ぶり返したら「また来たな!おつかれさん!」

なぜ?と問い詰める
理詰めで物事を考えるのが好きな人は、ひたすら「なぜ?」と問い詰めていく方法です。何度も「なぜ?」と繰り返していくうちにネガティブな思考に根拠がないことに気づいていきます。
例「自分はダメだ」→「なぜダメなのか?」→「そう思うんだから仕方ない」→「なぜそう思うのか?」…など

方法③「瞑想」(呼吸に意識を向ける)

ここ数年で瞑想研究も進み、薬物治療と同じレベルの効果があることが分かってきており、不安のストレスには間違いなく瞑想が効きます。瞑想は多様なやり方がありますがここでは「ブリージング・メディテーション」呼吸に集中しながら行う瞑想をご紹介します。

やり方
・まずは8週間だけ試してみましょう
・30~40分/日
1,できるだけ静かな、照明はやや暗めに、背筋を伸ばして座り、タイマーをスタートさせます
2,深呼吸を3回して、鼻の穴に息が当たる感覚をチェック。鼻孔のフチか鼻の奥あたりが空気を感じやすいはず。そこが瞑想中に意識を集中させるポイントになります
3,自然な呼吸を心がけ、2のポイントに意識を向けながら、呼吸を見つめるような感覚で行ってください
4,注意がそれたらゆっくり呼吸に意識を戻します
5、また注意がそれたらゆっくり呼吸に意識を戻します
6、タイマーが鳴ると終了です

方法④「AWAREテクニック」

認知行動療法の父と呼ばれる心理学者アーロン・ベック博士が、不安から来る心の負担に立ち向かうために開発したストレス解消法です。
AWAREはこのステップで使う頭文字の「Accept(受容)」「Watch(観察)」「Act(行動)」「Repeat(反復)」「Expect(期待)」からきています。このテクニックの目的は単にイライラや不安を受容するだけではなく、あなたにとって価値が高い行動の数を増やしていくために作られています。
一般的にストレスを抱えがちな人は、ネガティブな感情や思考に囚われて、中々行動に移せななくなる傾向があります。不安と戦うのではなく不安を受け入れて行動することが重要です。以下に具体的なステップをご紹介しますので是非試してみてください。

ステップ1「受容」
「イライラしてきた」「不安になってきた」と感じたら、まずは受容の精神で受け止めます。ここで「ポジティブに考えないと」など考えるのはNG。自分の中にネガティブな思考や感情が存在する事実を認めるのがポイントです。

ステップ2「観察」
次にネガティブな思考や感情から距離を置いて、自分とは無関係なものとして眺めてみましょう。大抵の人にとって不安やイライラは一時的なものです。他人事のように見つめ、自動的に消えていく様子を良い悪いの判断をせずに、ただ淡々と眺めることが大事です。
この感覚がイマイチつかめない場合は、先ほどの「脱フュージョン」のテクニックを参照してみてください。

ステップ3「行動」
ここまでで、あなたのネガティブな感情はかなり減ったでしょう。しかし、不安やイライラは根深いものなので、一朝一夕には消えてくれません。
しかし、それでも構いません。ステップ3では、不安の存在を認めたまま、あたかも不安がないかのように行動してください。
どうあがいてもネガティブな感情が完全に消えることはありません。不安や恐怖を克服したかのように振る舞い、何の問題も無いかのようなフリをして行動してみましょう。

ステップ4「反復」
ここまできたらあとはステップ1~3を何度も繰り返すだけです。「イライラする→客観的に観察→何もなかったかのように行動」

ステップ5「期待」
最後のステップはステップ3「行動」の補足になります。誰でも自分の行動に対して良い結果を期待するものですが、当然ながら、良い結果が出ることもあれば悪い結果が出ることもあります。あまりに現実離れした期待をしていては、失敗に終わった時のストレスは激増してしまいます。
行動の結果に対して希望と自信を持ちつつも、決して過度な成果を望まないことです。現実に起こり得る障害を予想しながら淡々と行動していきましょう。

根本原因に立ち向かう

今回はロングストレス(根本原因)の解消法についてご紹介していきました。
人はどうしても楽な方、楽な方へと考えてしまい、表面だけしか見ようとしません。しかし、表面ばかりに気を取られていると、根っこはボロボロになり、倒れてしまいます。根本原因を治すのには時間がかかりますが、今からでも遅くはありません。一度しかない自分の人生の為に、少しずつでも前に進めていきましょう。

次は目の前のストレスである「ショートストレス」と「ループストレス」の解決策をご紹介していきます。
ストレスに悩まないために③


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