マイホームか賃貸か

「戸建て、賃貸はライフスタイルで決める」


人生の大きな選択は慎重に

マイホームは夢

「いつかマイホームを持ちたい」というのは多くの人が一度は思ったことのある夢ではないでしょうか。
「マイホームか賃貸、どちらが良いか」というテーマは、多くの人が直面する大きな人生の選択です。それぞれには利点と欠点があり、どちらが適しているかは、個々のライフスタイル、財務状況、将来の計画によって異なります。総務省の「住宅・土地統計調査※2022年」データでは、日本の持ち家率は約60%です。この割合は地域や年齢層によって異なり、地方では持ち家率が高く、都市部では賃貸住宅に住む人が多い傾向があります。住宅を購入する年齢層は、一般的には30代から50代が中心です。この世代は、結婚や子育てを機に家を購入することが多く、また住宅ローンの返済計画を考えやすい年代でもあります。

結局どちらがいいのか?

今回は戸建て住宅と賃貸住宅どちらがいいのかについてご紹介していきます。

それぞれの一般的なメリット・デメリット

ここでは、マイホームと賃貸それぞれの一般的なメリット・デメリットを比較しながら、選択の指針となるポイントを整理していきます。

マイホームのメリット

  1. 資産形成
    マイホームは購入後、住宅ローンを支払い続けることで最終的に自分の資産となります。住宅価格が上昇すれば、その資産価値も増加する可能性があります。
  2. 安定した居住
    賃貸と違って、マイホームではオーナーの都合で退去を求められることがありません。自分のライフスタイルに合わせたリフォームや改築が可能です。
  3. 将来的な節約
    住宅ローンの支払いが完了すれば、その後は大きな支出が減り、老後の住居費用が抑えらます。

マイホームのデメリット

  1. 初期費用が高い
    頭金や諸経費が必要で、初期費用が非常に高額になることが多いです。また、住宅ローンの長期的な返済負担もあります。
  2. 固定資産税と維持費
    マイホームには毎年固定資産税がかかり、さらに修繕やメンテナンスの費用も自己負担となります。
  3. 流動性の欠如
    転勤やライフスタイルの変化に合わせて簡単に引っ越すことが難しいです。売却するにしても、タイミングや市場状況によっては損をする可能性もあります。

賃貸のメリット

  1. 柔軟性
    ライフスタイルや仕事の変化に応じて、簡単に引っ越しが可能です。転勤や新しい地域での生活を試したい場合にも最適です。
  2. 初期費用が少ない
    賃貸の場合、敷金や礼金などの初期費用がマイホーム購入時よりも低く抑えられます。また、修繕やメンテナンス費用も家主が負担するため、自分で負担する必要がありません。
  3. 経済的なリスクが少ない
    住宅ローンを組む必要がなく、金利変動や不動産市場の影響を受けるリスクが少ないです。

賃貸のデメリット

  1. 資産形成ができない
    賃貸では、家賃を支払い続けても自分の資産にはなりません。将来的に住居費が発生し続けるため、老後の経済的な負担が増す可能性があります。
  2. 家賃の変動
    物件やエリアによっては、家賃が上昇することがあります。長期的に見ると、マイホームの方が経済的に有利になる場合もあります。
  3. 自由度の制約
    リフォームやペットの飼育など、物件によっては制約が多く、自分の好みに合わせた生活がしづらいことがあります。

実際のメリット・デメリット

前項では一般的なメリット・デメリットを紹介していきましたが、本当にそうなのか?少し深堀していきましょう。

資産形成について
賃貸住宅は住んでいる限り、延々と賃料が発生するのに対し、マイホームは払いきってしまえば土地も建物も自分のものになるので資産として残るというのはよく言われることです。では資産とはなにか?
「資産」とは個人や法人が所有し、経済的価値を持つもの全てを指します。マイホームで言うと「土地」「建物」がこれに該当します。
確かに土地と建物が手に入れば資産にはなります。しかし、トータルとしてマイナスになってしまうのなら意味はありません。むしろ買わない方がいいです。本当にそうなのか少し計算してみましょう。

「建物」
最近の技術進歩により、耐震性や耐久性に優れた住宅も増えており、また、建物の構造、メンテナンスの状況、使用材料、環境条件などに大きく影響されますが、一般的には以下のように言われています。

・木造住宅の寿命は約30年から40年
・鉄筋コンクリート造(RC造)住宅の寿命は約50年から60年程度

実際には、日本の住宅は30年から40年で建て替えられることが多いですが、適切にメンテナンスされた家は50年から60年以上もつことがあります。
建物の評価額としては経年劣化により基本的に毎年下がっていく傾向にあり、新築であっても住むと4割程度評価が下がり、法定耐用年数の22年を過ぎると、税務上の建物の価値はほぼゼロと見なされることがあります。

「土地」
バブル崩壊後は急速に地価が下落し、その後の長期低迷期に入りました。しかし、ここ数年、都市部では毎年約3~5%程度の上昇傾向、地方では毎年約1~2%の上昇が見られますが、下落や横ばいの地域もあります。都市部と地方では土地価格が倍以上変わります。

・都市部で平均約30万円/㎡
・地方で平均約10万円/㎡前後


「メンテナンス」
戸建て住宅のメンテナンスには、定期的に行うべきものや、特定のタイミングで必要になる大規模な修繕など、さまざまな種類があります。これらのメンテナンスを適切に行うことで、住宅の寿命を延ばし、住み心地を保つことができます。以下に、主なメンテナンス項目とその費用の目安を紹介します。

1. 外壁の塗装
外壁は風雨や紫外線によって徐々に劣化します。塗装を定期的に行うことで、外観の美しさを保ち、建物の耐久性を維持します。
頻度::10年から15年に一度 費用:約80万円から150万円(床面積30坪から40坪の住宅の場合)

2. 屋根の塗装・修理
屋根も外壁と同様に、風雨や紫外線によって劣化します。特に、日本の気候では雨が多いため、屋根のメンテナンスは非常に重要です。
頻度:10年から15年に一度 費用:塗装は約50万円から100万円、屋根の修理や葺き替えは約100万円から300万円

3. 外装リフォーム(防水工事)
雨漏りや水の浸入を防ぐために、屋根や外壁の防水処理を行います。特に、ベランダやバルコニーの防水も重要です。
頻度:10年から20年に一度 費用:約30万円から100万円(施工範囲による)

4. 給排水設備の点検・修理
給排水管は、長期間使用すると老朽化し、漏水や詰まりが発生する可能性があります。定期的な点検と必要に応じた交換が重要です。
頻度::15年から20年に一度 費用:配管の修理は約10万円から30万円、配管全体の交換は約50万円から150万円

5. シロアリ対策
木造住宅では、シロアリ被害を防ぐための対策が必要です。シロアリ防除剤の散布や床下の点検が行われます。
頻度:5年から10年に一度 費用:約10万円から30万円

6. 給湯器の交換
給湯器は、使用頻度が高いため、比較的早い段階での交換が必要になります。給湯器が故障すると、生活に支障が出るため、定期的な点検と交換が推奨されます。
頻度:10年から15年に一度 費用:約15万円から50万円(機種や機能による)

7. 内装のリフォーム(クロス・床の張替え)
内装は、日常的な使用による汚れや摩耗が避けられません。特に、壁紙や床材の劣化が目立ってきたら、リフォームを行うと良いでしょう。
頻度:10年から15年に一度 費用:クロスの張替えは約10万円から30万円、床の張替えは約20万円から50万円

8. 窓やサッシの点検・修理
窓やサッシは、風や雨を防ぐための重要な部分です。これらが劣化すると、断熱性能が低下し、結露や雨漏りが発生しやすくなります。
頻度:20年から30年に一度 費用:修理は約5万円から20万円、交換は約50万円から100万円

9. 電気配線の点検・修理
電気配線は、経年劣化によって火災の原因となることがあります。定期的な点検を行い、必要に応じて配線の交換を行います。
頻度:20年から30年に一度 費用:約10万円から50万円

上記で上げたものはあくまで目安なので、当然もっと安くできる項目もあれば高くなる項目もあります。毎年約10万円~約30万円の範囲でかかることが多いそうです。

「税金」
戸建て住宅を持っている場合、「固定資産税」と都市計画区内に戸建て住宅を持っている場合には「都市計画税」が毎年かかってきます。
固定資産税と都市開発税は、土地や建物などの固定資産に対して課される税金で、固定資産の評価額に基づいて計算されます。したがって、建物の年数が経過し、評価額が減少することで、都市計画税も減少する可能性があります。評価額の見直しは3年ごと。
基本的には全国共通で「評価額の1.4%」とされていますが、自治体によっては最高で2.1%まで引き上げることが可能です。

「住宅ローン」
家を購入する際に多くの人が使っているのが住宅ローンです。購入金額を一気に借りて、毎月返済していく方法です。
借り方は2パターンあり、「変動金利型」と「固定金利型」があります。

「変動金利型」
金利水準:約0.3%~0.6%以上
現在では低金利が続いており、固定金利よりも安い金利で借りられる傾向がありますが、市場金利に連動しているため約半年ごとに金利の上下があります。固定金利より高くなる可能性もあります。

「固定金利」
金利水準:短期3~5年:約0.5%~1.0%、中期10年:約1.0%~1.5%、長期20~35年:約1.5~2.0%
固定金利型は契約時の金利が一定期間固定されるタイプで、一般的に変動金利型よりも高めに設定されていますが、将来の金利上昇リスクを避けることが出来ます。また短期・中期・長期と固定期間が選べます。

戸建てにかかる生涯費用

「建物」「土地」「メンテナンス」「税金」「住宅ローン」が主要な戸建てにかかる費用になるかと思います。それぞれ選択によって金額が大きく変わってきますが、ざっくり平均的な数字で条件を設定して出していきたいと思います。

30歳で地方に戸建て住宅を建てる場合、平均的なものだと、2階建て4LDKで35坪(約115.8㎡)。土地代で約1157万円、建物代で約2000万円、住宅ローンは3200万円借りたとして、固定金利30年利率2.0%で購入したとすると・・・

住宅ローンが払い終わるまでにかかる費用(30年)
「住宅ローン金額」
3200万円+1058万80円(ローン利子)=4258万80円※毎月11万8278円(ボーナス払いはなし)
「メンテナンス金額」
毎年10万円×30年=300万円
「固定資産税」
※評価額は3年ごとに見直されますが推測困難のため、24年で建物の評価額が0円になるように計算しています。
※土地は変わらないものとして計算しています
評価額:建物1200万円、土地800万円の場合=約28万円×3年=84万円
4~6年:建物1000万円、土地800万円の場合=約25万円×3年=75万円
7~9年:建物830万円、土地800万円の場合=約23万円×3年=69万円
10~12年:建物660万円、土地800万円の場合=約20万円×3年=60万円
13~15年:建物480万円、土地800万円の場合=約18万円×3年=54万円
16~18年:建物300万円、土地800万円の場合=約15万円×3年=45万円
19~21年:建物130万円、土地800万円の場合=約13万円×3年=39万円
22~30年:建物0円、土地800万円の場合=約11万円×8年=88万円
合計514万円

合計すると・・・「5072万80円」

そしてここからが住宅ローンの強みと言われているところです。
30歳で購入して60歳でローンを完済。日本人の平均寿命84歳まで生きるとして計算すると・・・

「住宅ローンは無し」

「メンテナンス金額」
毎年10万円×24年=240万円

「固定資産税」
評価額:建物0円、土地800万=約11万円×24年=264万円

合計すると・・・「504万円」

ということで、30歳で買った家を84歳まで使った場合の総額は大体約5600万円という計算になりました。
そしてここからが本題です。「資産としてはどうなのか」ということ。

基本的に建物の経済的価値というのは30年経つと約8%になることが多いそうなので、建物としてはゼロと考えておいた方が良いでしょう。
残るのは「土地」です。現在土地は上昇傾向にありますが、バブルが弾けた時に急落したこともあり、今後もずっと上がり続けるとは限りません。
今回は変わらないものとして考えると「土地800万円」というのが今回の残った資産ということになります。

賃貸にかかる生涯費用

さて、続いては「賃貸」の方です。住んでいる間ずっとお金が発生し、資産としても残るものはありません。しかし、戸建て住宅で発生していたメンテナンス料金も無く、税金もかかりません。果たしてどれぐらいかかるのか、計算してみましょう。

30歳から84歳まで地方に3LDK10万円/月で住んだとしたら・・・

10万円×12カ月=120万円×54年=6480万円

結果は戸建ての方がお得?

戸建ての生涯費用は約5600万円、賃貸の生涯費用は約6500万円という結果が出ました。今回の計算で行くと約1000万円ほど戸建ての方が安く、おまけに資産も残っているので戸建て一択!になってしまいそうですが、そう簡単な話でもなさそうです。
というのも、戸建ては自然災害にも備えなければいけないので毎月保険料などの費用もまた別に発生します。メンテナンスに関しても、今回は低めに設定してますが、大きな故障などが発生すると数百万単位のお金が発生する場合もあります。資産として残ったとしても、撤去費用や売却手数料などまた費用がかかります。
対する賃貸物件は、一番の強みである柔軟性を生かすには引っ越し費用が掛かります。賃貸料金を下げる方法もありますが、引っ越しをすればするほど費用はかさみます。

人生の大きな選択は慎重に

結論「マイホームか賃貸か」という選択は、一概にどちらが良いかを決めることはできないでしょう。個々の状況に応じて、将来の生活設計や経済状況を総合的に考慮し、自分にとって最適な選択を見つけることが大切です。
戸建てに関しては、どんな土地に家建てるのかが重要です。利便性、資産、地盤、発注業者など慎重に検討していきましょう。賃貸に関しては、敷金・礼金や仲介会社、自治体によっては引っ越し費用を出してくれるところもあります。
「周りがそうしているから」「言っているから」ではなく、それぞれのメリット・デメリットを考えて、自分のライフスタイルに合った住居を選んでいきましょう。

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